音盤話��
魂を揺さぶる津軽三味線 （2007.03.09）
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この記事で触れた民謡のレコードとは、「日本民謡のすべて」と題する愛蔵版ＬＰ（計４枚）で、70年代の初頭に父が購入したものです。
実はこれを購入する以前から、私の親は民謡もよく聴いていました。
土曜日の昼からやっていたテレビの「素人民謡名人戦」も毎週のように観ていましたし、それで私も子供の頃から折に触れて民謡に接していました。
何だかんだ言って、民謡には日本人としての心の源流というものがあるように思います。
とはいえ、自分から民謡のＣＤを購入する気はなかなか起きませんでした。有名どころは大体レコードに収録されていますし。
そんな折、偶然見つけたのが今回紹介する「源流・高橋竹山の世界」というＣＤでした。
高橋竹山（1910〜98）と言えば、津軽三味線の第一人者で、その魂を揺さぶる演奏が日本のみならず海外でも知られた人物です。
津軽三味線は、一般的な三味線と違い太棹で、叩きつけるような演奏法が特色です。元々は伴奏楽器にすぎなかった三味線が、独奏楽器として広く知られるようになったのは、実は竹山の功績です。彼は、三味線独奏用の曲も自ら作曲しています。
彼がいなければ、今日の吉田兄弟や上妻宏光などの活躍もなかったことでしょう。
これは、そんな竹山が1963年に発表したファーストＬＰの復刻版です。
収録曲は、「津軽じょんから節」「津軽よされ節」「津軽小原節」の所謂津軽三大民謡を中心に組まれており（詳細は画像クリック）、これらは数ある津軽民謡の中でも特に即興性が高く技巧に富んでおり、ライブでも好んで演奏されるものです。
たまには、日本人の源流に触れてみてはいかがでしょうか？
人類の進歩と調和(2007.03.15)
昭和45年(1970)の３月15日は、日本万国博覧会（ＥＸＰＯ'70）が開幕した日です。（閉幕は同年９月13日）
大阪・千里丘陵に設けられた会場に、参加77か国、総入場者6400万人を集めた、戦後日本を代表する一大イベントとなりました。
当時６歳、幼稚園児だった私も、親に連れられて一度観に行きました。
会場はただ人が多く、その中にはそれまでなかなか間近で見かけることのなかった外国人も多かった、と記憶しています。
アメリカ館の前では、１時間半もの間じっと行列の中で待ち続け、ようやく入館できても目玉の展示物「アポロ宇宙船が持ち帰った月の石」も、ほんの一瞬しか見えませんでした。でも今ではそれもいい思い出です。
ただ次の日は、さすがに行列に懲りてか、あまり並ばなくても入れそうなパビリオンばかりを狙っていましたが。
こんな風に、大阪万博を実際に観に行った人にも、そうでない人にも楽しめるＤＶＤが今回紹介する「日本万国博」です。（詳細は画像クリック）
公式記録映画としてはこれまでにないスケール（制作費３億４千万円、スタッフ18000人、使用フィルム尺10万ｍ）のこの作品は、1971年の日本映画興行成績で堂々の第１位を記録しています（因みに洋画１位は「ある愛の詩」）。
映画は、単に183日間に及ぶ万博の様子を淡々と記録するのではなく、時には来場者の目線で会場の賑わいを眺めたり、時には人類の未来に警鐘を鳴らしたり、正に万博が掲げたキャッチコピー「人類の進歩と調和」が全編を通じてのテーマになっているように思います。
当時を知る者には懐かしく、そうでない人にも、まるで今会場にいるかのような擬似体験のできる作品だと思います。それこそ、あるグルメリポーター風に言えば、
「これぞまさしく、映像の、タイムマシンや〜」
といったところでしょうか。
古典と新作のあいだにいるミュージシャン(2007.03.25)
皆さんは、 「冷静と情熱のあいだ」という小説をご存知でしょうか？
これは、江國香織・辻仁成の両氏が、男女それぞれの視点から同じストーリーをなぞって書き綴った小説で、2001年頃には竹野内豊とケリー・チャンの主演で映画化もされた作品です。
物語は、東京、ミラノ、そしてフィレンツェ（フローレンス）を舞台に繰り広げられますが、実は映画化に先駆け、辻氏はある人物にこの作品のイメージ曲の作曲を依頼しています。
それが、今回紹介するＣＤ"Endless Violin"を手がけた葉加瀬太郎氏です。
「冷静と…」のイメージ曲も収められたこのＣＤ（詳細は画像クリック）は、葉加瀬氏オリジナルの作品を中心に、クラシック曲も織り交ぜた選曲となっています。
映画のほうは、私も観たことがあるのですが、実は葉加瀬氏のサポートメンバーでもあるチェリスト・柏木広樹氏も出演していたとのことです。確か竹野内氏と絡むシーンだったように思います。
葉加瀬氏と言えば、バイオリニストとして、元々はクラシック畑の人だったのが、その後音楽ジャンルにとらわれず幅広い活動を繰り広げていることで有名です。このＣＤを引っさげてのコンサートにも行ったことがありますが、演奏もさることながら、間のトークでも決して聴衆を飽きさせない話術はさすが、と思いました。
これは当ブログでも繰り返し言ってきていることですが、本来いい音楽にジャンルは関係ありません。現在クラシック音楽とされるものも、それが発表された時点ではむしろポピュラーの部類だったわけで、それらが長い年月の間に古典（クラシック）と言われるようになっただけのことです。古典と新作のあいだで活躍するミュージシャンこそ偉大だと思います。
これぞ本家ドリームガール（ズ）（2007.03.27）
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映画「ドリームガールズ」を御覧になられた方も多いことでしょう。
私自身は未見なのですが、その映画のモデルとされるダイアナ・ロスのＣＤなら手元に２点あります。
１点はシュープリームス時代からのヒット曲を集めたベスト盤、そしてもう１点が今回ご紹介する"Take me higher"です。
このＣＤは2001年頃、フリーマーケットを覗いていた時に偶然発見したものです。
確か海外によく出かけるという女子大生が出店していたのですが、そのためかこのＣＤもアメリカ仕様でした。
そこで、アメリカ仕様のもの、日本仕様のものの両方を紹介することにします。
収録曲は両者ほぼ同じですが、"If we hold on together"は日本版のみのボーナストラックとなっています。
１曲目の表題曲（邦題「思い出にかわるまで」）から最後の"I will survive"（邦題「恋のサバイバル」）まで、さすが実力派、とうならせる選曲となっています。
ところで、それ以外の９曲について、原題と邦題を収録順に並べると、あれっと思ってしまいます。
原題（収録順）
If You're Not Gonna Love Me Right
Voice of the Heart
Let Somebody Know
Keep It Right There
Don't Stop
Gone
Only Love Can Conquer All
I Never Loved a Man Before
I Thought That We Were Still in Love
邦題（収録順）
イフ・ユア・ノット・ゴナ・ラヴ・ミー・ライト
初恋のように
スウィング・イット
時を止めて
ドント・ストップ
ゴーン
スティル・イン・ラヴ ヴォイス・オブ・ザ・ハート
オンリー・ラヴ
微妙に曲順が変わっているように感じるのは私だけでしょうか？
違いを楽しむ人へ (2007.04.16)
香り豊かなひととき ~ザ・コレクション・オブ・ネスカフェCM~
コーヒータイムのお供にぴったりのＣＤをご紹介します。
「香り豊かなひととき」と題するこのＣＤ，実はネスカフェのＣＭ曲を集めたものになっています。（詳細は画像クリック）
ネスカフェのＣＭ曲といえば、あの「ダバダ…」のスキャットが特に有名ですが、このＣＤではその「ＤＡＢＡＤＡ」が様々なアレンジで楽しめます。
1992年以降使われているオリジナルバージョンの他（それ以前のものが非収録である点残念ではあるが）、小野リサ、サンディー（バックは東京スカパラダイスオーケストラ）、マリーン、白鳥英美子、ＥＰＯ、石川さゆり、と各者各様の「ＤＡＢＡＤＡ」を聞き比べるだけでも一聴の価値ありです。
「ＤＡＢＡＤＡ」に限らず、1998年発表の"OPEN UP"、渡辺美里が歌う"Killing me softly with his song"（邦題「やさしく歌って」）、沢田研二の「つづくシアワセ」、「モーニングキャンペーン」の中で使われた谷川俊太郎の詩のバックに流れた息子・賢作の曲「天使の涙」など、バラエティーに富んだ選曲は、きっと貴方のコーヒータイムをより楽しくする事でしょう。
なお念のため言っておきますが、私は決してネスレの回し者ではありません。
人と自然と響き合う音楽 (2007.04.22)
琥珀色の時間~THE COLLECTION OF SUNTORY WHISKY CM~
以前の記事で紹介したネスカフェに続く、ＣＭ曲集ＣＤの第２弾です。
今回ご紹介するのは、サントリーウイスキーのＣＭ曲を集めた「琥珀色の時間」です。（詳細は画像クリック）
サントリーと言えば、後に作家となった山口瞳や開高健が、以前は同社専属のコピーライターだったことでも知られるほど、その広告センスは秀逸です。ＣＭ音楽に関しても、ＣＭの為に作られたものであれ、既に知られたものであれ、企業や商品のイメージに合わせた選曲のセンスは見事としか言いようがありません。
サントリーウイスキーのＣＭ曲と言えば、小林亜星作曲の「夜がくる」が特に有名です。このＣＤにも２バージョン収録されています。
というより、このＣＤ自体がこの曲の口笛バージョンに始まり、スキャットバージョンに終わる、という構成を採っており、ここからして心憎い演出と思ってしまいます。
他には、石川さゆりの新境地を感じさせる「ウイスキーがお好きでしょ」、布施明の「５杯が限度かなあ…」の台詞も懐かしい「落葉が雪に」、日野皓正の「シティコネクション」やロン・カーターの「ダブルベース」「３６４１４」といったジャズ、井上陽水の「いっそセレナーデ」（ただしここでは演奏のみ）、ヨーヨー・マが出演したＣＭで使われた「無伴奏チェロソナタ」あるいはバッハのチェロ組曲などのクラシック、とこちらもバラエティーに富んだ選曲となっています。
グラス片手に耳を傾けるのも一興でしょう。
サントリーのＣＭ曲集には、他にもウーロン茶を取り上げたものもあるそうですが、いずれワインやビールと言った商品も取り上げてくれたら、と思います。
気分はスイートルーム(2007.04.28)
世間的には大型連休といわれる期間中でも、中には「そんなの関係ない。自分は普段通り働いている」と言う方もおられるかと思います。
私もその一人ですが。
そんな、連休中どこにも行けない人のために、せめて気分だけでも高級ホテルのスイートルームにいるようになれるＣＤをご紹介します。
"PARK HYATT TOKYO AIRFLOW"と題されたこのＣＤ、タイトルからお解りの通り、東京・西新宿にあるアーバンリゾートホテル・パークハイアット東京をイメージして、フランス在住のＤＪ、ジャメル・アマディ氏が選曲した14曲からなるものです。
私も何年か前に、妻への誕生日プレゼントを兼ねてこのホテルを利用しましたが、客室にはこのＣＤが置かれていて、試しに聴いてみたところ、なかなかセンスのいい選曲と妻も喜び、記念に購入しましたが、実は一般市販もされており、こうしてご紹介することにしました。
ジャケット写真は、同ホテルの47階にあるフィットネスプールを撮ったものですが、これだけ見ても、大都会の中のオアシスといった雰囲気が出ているように思います。
収録曲について詳しくは画像クリックで確認できますが、ヨーロッパのミュージシャンを中心に日本の本多俊之氏（10曲目"Burnin' waves"）やアメリカのミュージシャンの粋をも取り入れながら、ジャズ、ソウル、フュージョンといった分野から幅広く選曲されています。
中には、一般には手に入らない音源を使った楽曲もあります。13曲目の"Expo in Tokyo"もその一つで、テレビ・ラジオ等で使われる特殊効果音を編集したものとなっています。この曲では、中国をイメージするフレーズとして知られる「チャカチャカチャンチャンチャンチャンチャーン」が使われているのが耳に止まりました。「東京なのに何で中国？」と思われるかもしれませんが、実はこのフレーズ、ハリウッド映画で広く東洋をイメージしたフレーズとして古くから使われているのです。だから中国に限らず、日本・韓国・タイ・マレーシアなど東アジア全般をイメージしているわけです。
どこかへ出かけられるという方も、ドライブのお供にこれを聴いてみてもいいかもしれません。
ハワイアンとボサノバの融合（2007.05.07)
上記「違いを楽しむ人へ」という記事で紹介したＣＤでは「ＤＡＢＡＤＡ」を歌う歌手の一人として話題に上った小野リサさんですが、彼女はどんなジャンルの音楽にも果敢に挑戦し、しかもそれを完全に自分のものにしているところがすごいと思います。特に彼女の生まれ故郷であるブラジル伝統の音楽、ボサノバと癒合させる事で、ジャズもシャンソンもカンツォーネも、独特な「リササウンド」にしてしまうのは見事です。
今回はそんなリサさんのＣＤの中から、"LISA’S ONO BOSSA HULA NOVA "をご紹介します。（詳細は画像クリック）
タイトルからお解りの通り、ここではハワイアンミュージックにリサ風の味付けをしています。
１曲目の"Swing time in Honolulu"は、これにスウィングジャズという要素も加味されていますし、普段はポルトガル語（ブラジルの公用語）で歌うことの多い彼女が珍しくハワイの言葉で歌う曲も何曲かあって、それも面白い試みです。
日本でも馴染みの曲も多く収録されていますが、中でも最後の"Aloha'oe"では、ハワイの歌姫、テレサ・ブライトとの共演が聴かれます。 ボサノバという音楽自体、どこかクールな印象を受けますが、これがハワイアンと融合する事でより清涼感のあるサウンドに仕上がっているように思います。
ピアノ改良にかけた熱情（2007.05.14）
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」、第14番「月光」、第21番「ワルトシュタイン」、第23番「熱情」
ピアノという楽器は、18世紀初頭に発明され、それから１世紀足らずの間に、その豊かな表現力に魅せられた多くの作曲家が、ピアノの為の楽曲を次々と書くようになりました。
そもそも鍵盤楽器は、その音域の広さと、10本の指を使い複数の音を同時に出せる、と言う特徴を持っており、更にピアノの登場で音の強弱がつけられる様になったのです。当初は「ピアノフォルテ（音楽用語の弱いと強い）」と言っていたことからも判りますよね。
今でこそ「小さなオーケストラ」と例えられるように、ピアノの音域はフルオーケストラのそれに匹敵するものとなっていますが、発明された当初は今に比べ音域も狭く、その性能も良くありませんでした。
ハイドンやモーツァルトの頃は、ピアノに対しそれほど高度な表現意欲もなく、気軽に弾ける曲が多かったのですが、やがてそれでは飽き足りず、豊かな表現力を生かした作品を作ろうと試みた作曲家が現れます。
その名は、ベートーベン。
彼は、それまでの音域のピアノでは、自らの表現したいダイナミックな音楽が作れず、常々不満に思っていました。そんな彼の要望に応えようと、様々な楽器職人が新製品を持ち込みますが、なかなか彼の要望に応えるものが現れません。そんなある日、ある職人がそれまでより音域を広く取ったピアノを持ち込みます。
ベートーベンはこれを大層気に入り、その広がった音域を生かした、より表現力豊かな作品を世に送り出しました。
ピアノソナタ「熱情」はそうした作品の一つです。
この「熱情」と共に「悲愴」「月光」がベートーベンの３大ピアノソナタとして有名ですが、我が家にもこの３曲を収めたＬＰがあります。
演奏しているのは、20世紀のドイツを代表するピアニスト、ウィルヘルム・ケンプ（1895〜1991）です。彼は演奏家としてのみならず、作曲や教育活動でも輝かしい功績を残した人で、その誠実な人柄が滲み出る演奏法で親しまれました。
現在、そのレコードも画像のようにＣＤ化されています。ＣＤのほうにはもう１曲、「ワルトシュタイン」が収録されていますが、これもピアノの表現力を広げた作品の一つです。
梅雨時には気分の晴れる音楽を(2007.06.08)
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南西諸島や九州の一部では既に入梅、これから四国や本州各地も順次鬱陶しい季節となります。
そんな季節こそ、気分だけでも晴れやかにという訳で、再び小野リサさんのＣＤをご紹介します。（以下元記事より引用）
彼女はどんなジャンルの音楽にも果敢に挑戦し、しかもそれを完全に自分のものにしているところがすごいと思います。特に彼女の生まれ故郷であるブラジル伝統の音楽、ボサノバと癒合させる事で、ジャズもシャンソンもカンツォーネも、独特な「リササウンド」にしてしまうのは見事です。で、今回はそのカンツォーネです。
"QUESTA BOSSA MIA..."（私の歌を探して、といった意味）と題するこのＣＤ、イタリアをテーマに様々な楽曲が集められていますが、これを全曲イタリア語で歌っているのがミソです。
収録曲について、画像クリックで表示されるのは16曲ですが、私の手元のＣＤにはこのうち３曲目を除く15曲が収録されており、曲順も若干異なります。「チャオチャオ・バンビーナ」「オー・ソレ・ミオ」「ヴォラーレ」など我が国でも良く知られた曲も、それが独特のリサワールドに取り込まれるとまた違った趣があるように思います。
雨の日に聴けば鬱陶しさも紛れ、晴れた日に聴けば更に晴れやかな気分になれそうです。
