メディア談義��
冷静な判断を妨げるもの（2008.01.18）
一般市民の代表が司法の専門家と共に裁判に参加できる裁判員制度が導入された。
その際裁判員には、その事件の起きた経緯と、今後同様の犯罪が起きないための対策とを勘案し、被告人に相応の刑罰を言い渡す必要がある。
決して感情論にくみしてはならない。
しかし現実には、ある事件が起きると、一般市民の多くは犯人憎しの感情を持ちがちだ。
何故そうなるのか、その疑問に答える記事をＭＲＩＣで見つけた。
虎の門病院泌尿器科の小松秀樹医師による「マスメディアの問題」という記事がそれである。（以下引用）
マスメディアの報道に問題があると指摘する識者は多い。社会に対して負う責任が大きい人ほど、問題点を痛感しているように見える。報道が、社会システムの運用に支障をもたらし、その言説上の意図と異なり、ときとして、人々を不幸にする方向に機能してしまうからだ。メディアの問題は、主たる関心を情動におくこと、それを規範化すること、記事の機械的反復現象を起こすこと、厳密な認識の方法を持たないことにある。
小松医師の提言は、情報の送り手であるマスメディアに対するものだが、我々受け手の側も、大量に垂れ流しにされる情報を鵜呑みにせず、自分の頭で本当に必要な情報を取捨選択するトレーニングを積むべきではないだろうか。日本のマスメディアは、「被害者」が、悲嘆にくれたり、強い怨念を語ったりするのをそのまま伝えることをためらわない。恨みつらみの感情露出は、論理的な根拠を示すことなく、悪いのはあいつだというメッセージを人々の意識に刻印する。突き詰めると情動しか残らない大衆メディア道徳とでもよぶしかないようなものが、立派に規範として機能してしまうことがある。事故があると、官僚、専門家は、不可抗力だとしても、対応するための費用や権限がなくても、責任をおしつけられて、糾弾される。非難するのは無辜の庶民である。
「生の感情をそのまま報道するのはポルノグラフィーのようなもの」と新聞記者を対象とした講演で、意識的に彼らを刺激したことがある。ある記者は、私の発言が「各記者の心にざわめきをもたらした。しかし、大衆化した社会では、感情面での刺激がなければ新聞もテレビも成り立たないと信じて仕事しているので、二の句がつげなくなってしまう」と記者の受け止め方を解説してくれた。驚いたことに、自分たちが社会システムを破壊しているかもしれないという危惧を持っていないようだ。
ちょっと考えると分かることだが、感情は個人の心の中の現象であり、しかも、一方的なものである。心の中から外部に出すために多少加工されたとしても、一方的であることには変わりがなく、そのままの形では、社会的コミュニケーションは成立しない。コミュニケーションには相手が必要だからである。
（中略）
新聞やテレビの記者は、自分の判断を書かないよう訓練され、評価部分については、常に引用で記事を書こうとする。このため、刺激の強い情動を揺り動かす記事は、個人の良識による制御が及ばず、引用が引用を生むことで、機械的反復現象を惹き起こす。恐るべきことは、記者がこの反復される言説を自分でも信じてしまうらしいことである。結果として、一方的な意見の氾濫が生じるだけでなく、記者はそれ以外の意見を封殺する。
報道が落ち着かないもう一つの理由は、認識の甘さにある。医学の世界では論文の校閲は、その研究領域を熟知していなくてもできる。分野を問わず、チェックすべきことが決まっているからである。仮説が妥当なものとして記載されているか、方法が信頼できることが証明されているか、対象は適切に選択されているか、結果の解釈は妥当か。科学者の訓練に共通するのは、方法を通して得られた結果から何が言えて、何が言えないのかを厳密に考えることである。記者と科学者の本質的な違いは情報の多寡ではなく、認識の厳密さにある。記者の認識の甘さは、メディアが規範に拠って立つものであり、知識や物を生産したり、原子力発電や航空運輸のような高度なシステムを運用したりする認識が決定的な重要性を持つ専門領域とは思考様式が根本的に異なるからである。
（中略）
マスメディアは、報道に含まれる規範のみならず、報道が人々にもたらす結果を検証する責任がある。
コメント欄から
○とくにTVの報道ではやらせ的に絵になる場面を求める傾向があるみたいですね〜。
編集で強調したい部分を大きく取り上げたり。それは実際取材された経験があるので、いえるのですが、わずか何十分もかけて、インタビューされたものがわずか数秒の間に凝縮されるのはいいとしても、こちら側の意図する所とは別の角度から切り取られてしまうのが残念でした。感情的な手紙（メール）などをもらうと、動揺してしまうのは反省すべき点です。（ナナ）
●確かに、送り手の意のままに編集されてしまうことってありますね。
写真週刊誌に出てくる２ショット写真も、実際には４〜５人のグループで写っている写真の一部を拡大したものだったりします。（うみがめ）
○どんな基準で裁判員が選ばれるか分かっていないのですが〜
その基準はどんなもんなんですかね？ （津熊照美）
●裁判員は確か無作為抽出のはずです。
つまり、津熊さんも私も特に断る理由がない限り裁判員に任命されうるわけです。（うみがめ）
多勢に無勢(2008.02.20)
次世代ＤＶＤを巡る規格競争は、ＨＤ−ＤＶＤ方式の中心だった東芝が、同事業からの撤退を表明したことで、ソニーや松下（パナソニック）などのブルーレイ方式（ＢＤ）に凱歌が上がる形となりました。
ＨＤは生産コストが安く上がる反面、その容量でＢＤに劣り（因みに片面二層でＨＤ30ＧＢ、ＢＤ50ＧＢ）、採用するメーカーの少なさも相まって、劣勢に立たされていました。
更に追い討ちをかけたのが、最大のソフト供給源であるアメリカの大手映画会社の対応です。
ハリウッドでは最大手のワーナーブラザーズが、今年（2008）に入りＨＤからＢＤに寝返ったのです。
最大の後ろ盾を失った東芝は、こうした不採算事業に拘るより、好調の半導体事業を強化したほうが得策と考えたのでしょう、次世代ＤＶＤを巡る争いは、結局２年で収束することになりました。
実は互換性のない二つの規格が激しいつばぜり合いを展開するのは今に始まったことではありません。
かつて家庭用ＶＴＲを巡っても、ＶＨＳ[:VS:]ベータの激しい規格争いがありました。
1975年にソニーからベータ方式のビデオが発売、翌年にはビクターからＶＨＳビデオの一号機が発売されました。
ベータはカセットサイズが小さく、高画質であることなど、技術面では優れていたものの、その為に部品数がどうしても増えてしまい、これが低価格競争にとっての最大の足かせとなりました。
一方ＶＨＳは、ビクターの親会社だった松下を陣営に引き入れ、これ以外にも採用するメーカーを積極的に獲得し、共同で規格の充実を図る体制を確立したことで多数派を占めるに至りました。
因みに両陣営に参加していた企業は以下の通りです。
ＶＨＳ ビクター・松下・日立・三菱・シャープ
ベータ ソニー・東芝・三洋・ＮＥＣ
ベータ陣営のうち、ソニー以外の各社は低価格を武器にするＶＨＳ陣営に次々と引き込まれました。
結果86年にはソニーだけが残る形となり、そのソニーも88年にＶＨＳビデオの併売を開始、ここにベータの敗北が決定しました。
とはいえ、家庭用ベータビデオの生産自体は2002年まで続けられ、業務用は今も生産されています。
しかし常に多数派が勝つとは限りません。
ビデオディスクの規格競争では、当初孤軍奮闘していたレーザーディスクが、ＣＤとの互換性を売りにして、13社が参加したＶＨＤに勝ったのです。
よくこうした規格競争は、消費者不在の不毛な対立と言われます。
確かに、結果的に負け組を掴まされた側の損失は大きいものがあります。
しかしこのことで低価格化が進めば、本格普及にも弾みがつくというものです。 それにＶＨＳ[:VS:]ベータは収束までに13年を要しましたが、ＨＤ[:VS:]ＢＤは２年で収束しており、その意味では消費者が被る不利益はより小さいといえます。
勿論、「勝った」ＢＤ陣営も安閑としてはいられません。
今や映像は記録するものではなく、ネット配信されたものを観るだけという人も増えています。
そうした人たちの購買意欲をいかに掘り起こすかにＢＤ陣営の命運がかかっていると言えるでしょう。
規格競争をしている間は買い控えしていたと言えばもっともらしいのですが、実は経済的な理由で買わなかったのです。
ＤＶＤプレーヤーはＣＤプレーヤーとの兼用で2005年頃に購入しています。 いずれ録画・再生とも次世代ＤＶＤとは考えているのですが…
コメント欄から
○今でこそ、ディーガ一台しかないですが・・・。
ベータ派でしたね。
仕方なく、ＶＨＳも持ってましたけど・・・。
今回の件は、ソフトの問題も絡んでますからね・・・。
そういうのが好きな人は、困るのでしょうね・・。（Colour）
●私の周りにも、結構ベータ派は多かったようです。
確かに、ＢＤ勝利の背景には、ソニーの会長がハリウッドにも顔が利く人物だったことも影響しているようで… （うみがめ）
○先生、詳しいですね〜。
私はメカに弱くて、女にもね。（seaヤン）
●ＶＨＳビデオがいかにして生まれ、そしていかにしてビデオ市場を制したかについては、初期のプロジェクトＸでも取り上げられたところです。 （うみがめ）
○seaヤン！笑える〜。(*^o^*)
や〜っぱり女に弱いのね〜！
ところで、私もブルーレイ購入を検討している一人です。
なぜそこまでと思うでしょうが、デジタル化された今 特にＢＳを録画すると、ハードディスクに残した物が ＤＶＤに録画できない『一回限りの録画』になっているからです。
−Ｒから＋Ｒとか変えてもデジタルだと録画不可になったり 本当に面倒な時代になっています。
でも、いずれにせよビデオのように世間の流れを 見てから購入した方が、いい方法だと思いますよ。（さゆり）
●デジタル放送について、ダビングを10回までは認めようという動きも出ているようですが、購入の際にはこうした動きも十分検討するべきでしょう。（うみがめ）
○記憶媒体の選択は難しいですね。
世界規格で統一されることはコスト面 資源の有効活用の面からは歓迎すべき ですが競争市場の中で進めることは 困難なものがあります。
私も、次の方式は何にしようかと考えて いますがブルーレイに落ち付きそうです。（防人）
●確かに、市場原理という観点からは、多数の市場占有率を得たものが勝ち組となりますから、少数派の切り捨てにつながるという弊害は免れません。（うみがめ）
○自分もかつてベータで失敗しましたので じっとまっていました
あとは低価格が進むのを待ちます。（NON)
●とはいえ、ＨＤがここに来て売れ行き好調なんだそうです。
確かにＨＤは、次世代機としては敗北しましたが、現行のＤＶＤを観る分には高性能ということが主な理由です。（ＢＤは現行ＤＶＤとの互換性もない）（うみがめ）
スピルオーバー (2008.04.02)
電波とは本来、行政上の境界線など関係無く、広い範囲に届くものです。
しかし実際には、行政が定めた地域内に届くことを前提に、その出力や指向性が定められています。放送のほか、携帯電話やその他の無線通信も届くエリアは定められています。
ただ現実には、止む無く本来の放送区域外に電波が洩れてしまうことがあり、これをスピルオーバーといいます。
テレビ創生期には、まだチャンネルも少なく、受信機の普及率も高くなかったことから、スピルオーバーにも比較的寛容だったようです。
子供の頃伊豆半島に家族で旅行した時、伊東市内の旅館のテレビは東京局を鮮明に映し出していましたが、これも今考えれば洩れ電波を見ていたことになる訳です。
東京で観ていたテレビ神奈川や、函館で観ていた青森局も、実際には洩れ電波だった訳です。
兄が徳島の大学に進学し、その入学準備の為現地を訪れた私はそこで驚きの事実を知ります。
徳島には民放のチャンネルが１つしかなかったのです。
徳島市内では大阪局が実用的な状態で受信できるため、地元民放は１つあればいい、ということなのでしょう。
実際、２局目を作る計画もあったそうですが、そうした事情もあって実現しなかったとのことです。
ただ大阪局受信の為には屋外にアンテナを立てる必要があり、当初は下宿屋住まいのため室内アンテナで済ませていた兄は、その為に大阪局の恩恵に浴することはありませんでした。
教養課程から専門課程に移るのに合わせて引っ越したアパートでは、室内アンテナでも大阪局が不鮮明ながら映りました。
やがて共同視聴用の外付けアンテナに接続、これで大阪局も地元局とほぼ同じ条件で映るようになりました。
地上デジタル放送では、送信方向別に出力を設定出来ることから、スピルオーバーを抑えることが出来るのです。
そうすることで、本来の放送区域のみに電波を届けることが出来るのですが、それを徹底しようとすれば、その分費用がかさむ結果になりかねません。中継局を増やす必要が出てくるからです。
その点スピルオーバーを大目に見れば、中継局は少なく済む訳です。
とりわけ東阪名の三大都市圏には、各都府県毎に県域局が存在しており、それらの電波は前述の通り県境を容易に越えて届きます。
東京でＴＶＫの他、千葉テレビやテレビ埼玉を観ている世帯、大阪で神戸のサンテレビやＫＢＳ京都を観ている世帯、あるいは名古屋で三重テレビを観ている世帯も多いのです。
しかし行政は、デジタル化によって放送エリアを厳密に設定しようとしています。
その結果、隣県スピルオーバーは認められなくなるかもしれません。
例え県外からの洩れ電波であろうと、その地域では長年親しまれたチャンネルです。それがデジタル化のどさくさで観られなくなるのは避けるべきだと思うのですが…
コメント欄から
○近隣の放送が見えたとしてもなんの支障もないと思うんですが。ケーブル以外で大阪でタイガースの試合を見ようと思ったらサンテレビを見るしかないですからね。
サンテレビが見れなくなったら大阪で暴動が起きると思います。（ぽち）
●サンテレビは摩耶山の山頂に送信所があり、そこから尼崎方向に電波を飛ばそうとするとどうしても大阪にも電波が届いてしまうのです。それはデジタル波も同じことで、だからお役所としてもサンを大阪で観られなくすることはしないはずです。
関西で問題となるのはむしろテレビ大阪ではないかと思われます。ほかの在阪局が関西広域（二府四県）を放送エリアとしているのに対し、ここだけ大阪府域となっているからです。 （うみがめ）
○区域外再送信の制限に限らず最近憲法で保障された言論・表現の自由を否定するような動きが目立つような気がします。
マスコミ業界がその片棒を担いでいるのは開いた口がふさがりません。（Piichan）
●ここで言う「区域外再送信」とは、ケーブルテレビがサービスの一環としてその地域にない系列局の電波を受信することですが、これもデジタル化によって一部では認めない動きがあり、裁判沙汰になるケースもあるそうです。（うみがめ）
備讃瀬戸電波事情・ＮＨＫ編(2008.04.15)
（上記記事に関連して）
それで思い出したのですが、瀬戸内海を挟んで向かい合う岡山県と香川県（総称して備讃地区）では、周辺各県も含めた電波[:雷:]が入り乱れて飛び交っており、さながら電波銀座の様相を呈しています。
そのためか、地上デジタル放送の開始は平成18年（2006）12月と、全国でも最も遅くなりました。
そんな、備讃地区の電波事情について何回かに分けて取り上げます。
岡山市郊外にある金甲山から発せられた電波は、香川県のほぼ全域でも鮮明に受信できたため、当初は岡山局が香川県をも放送エリアとしていました。
視聴者にとってはそれでも特に不都合はなかったのですが、香川県及び県内の市や町、各種団体にとってこれは大きな問題でした。
どういうことかと言うと、例えば四国各県の抱える問題を話し合う討論番組に、香川の代表が呼ばれ出演しても、それが肝心の香川県では流れなかったのです。
岡山局では基本的に中国地方の話題しか取り上げないからです。
このことを不満に思う県会議員の有志がＮＨＫ高松に対し「香川でも県域放送を」と陳情しましたが、当初はなかなか聞き入れられませんでした。
当時はテレビチャンネルが12までしかなく、前述の通り周辺各県との混信を防ぐには、これ以上テレビ局を増やすことは出来なかったのです。
しかしやがて、風向きが変わります。
昭和37年（1962）に難視聴解消の目的で本格導入されたＵＨＦ帯が、当時の郵政省の方針転換により、都市部の大出力局にも認められるようになったのです。
これを受けて県会議員有志は改めてＵＨＦによる自主放送をＮＨＫ高松に陳情、了承されます。
こうして、昭和44年（1969）３月22日に、ＮＨＫ高松がＵＨＦによるテレビ放送を開始、今まで以上に香川ローカルの話題が取り上げられるようになりました。
四国ブロックの話題も、もう香川だけ流れないことはなくなりました。
ただそれも、デジタル完全移行によって見られなくなる光景かもしれません。
コメント欄から
○ちょっと電波とは違いますが・・。
おいらのが前に住んでた所。
今の家から2ｋｍくらい離れたところですが・・。
台東区なのですが、荒川区の新聞販売店から配られます。
大手の新聞社です。
それが嫌で別の新聞に替えたことがあります。
別の地域の、区報や区議会報、困るのは区議会議員選挙の時でした。
住んでる所の情報が見られないのは、それはきついですよね！（Colour）
●新聞販売にも地域割りというのがありますが、住んでいる地域と管轄する地域とが必ずしも一致してない場合もあるわけですね。
それは読者にとっては不都合極まりないでしょう。（うみがめ）
○放送の電波も様々ですね。
公共性の電波・・
狭い日本で見える見えない地形の問題。
今後はチャンネルも多くなると思います。 （さんちゃん）
●あと、九州でも有明海周辺が備讃瀬戸同様の電波銀座だ、と聞いた事があります。
福岡・佐賀・熊本・長崎の各県がこれに当たります。（うみがめ）
○ムツゴロウの生息地域ですね＾＾
昨年（2007）行きましたよ(ｏ￣∀￣)ノ”ぁぃ
ところで、その話は私の友人がNHKに勤務しているので以前聞いたことがあります。
本当に電波は乱れ飛んでいますね〜 （さんちゃん）
●上述のケースで言えば、かつてはＮＨＫ熊本が佐賀県をもカバーしていたという、香川と似たケースがあったそうです。（うみがめ）
備讃瀬戸電波事情・民放編（2008.04.16）
岡山・香川のテレビについて、ＮＨＫは当初広域だったのがやがて県域に移行したというのが上述の記事でした。
一方、民放の場合は、どうやらこれとは逆のパターンとなったようです。
ＮＨＫ岡山テレビが開局した翌年の1958（Ｓ33）年、両県それぞれに民間テレビ局が開局します。
その年の６月１日に岡山の山陽放送（ＲＳＫ）、次いで７月１日には高松の西日本放送（ＲＮＣ）がテレビ放送を開始したのです。両社はその略称からもお解りの通り、元はラジオ局（共にその５年前に開局）でした。
ＲＳＫがいち早くＴＢＳとネットを組めば、ＲＮＣはそれとバランスをとる形で日本テレビとネットを組み、両社は表向き県域を名乗りながらも、実際には対岸でも良く視聴されていました。
ＮＨＫ高松テレビが開局した1969（Ｓ44）年、両県それぞれに２番目の民放が登場します。
岡山放送（ＯＨＫ）と高松の瀬戸内海放送（ＫＳＢ）で、共に４月１日の開局です。
ここでも対岸のバランスを考え、ＯＨＫはフジテレビ、ＫＳＢはテレビ朝日とネットを組みます。
ただ、この両社が使うＵＨＦ波は以前にも述べた通り電波の伸びが悪く、対岸で視聴する人は先発２社に比べ少なかったようです。
現に香川に住む私の親類も、70年代当時ＯＨＫを観ていた家は皆無でした。
当時のＯＨＫはテレ朝とのクロスネットだったこと、またフジの番組の一部はＲＮＣで流れていたことも影響していたのでしょう。
しかし、やがて転機が訪れます。
1979（Ｓ54）年に、当時の郵政省が「備讃地区の民放の相互乗り入れ」という方針を打ち出したのです。
この方針に対し、事実上岡山波が全県をカバー出来る香川県は歓迎する一方、独自に３局目の開局を目指していた岡山県は「その可能性が無くなる」と反発、多チャンネル化に対する両県の温度差が浮き彫りとなりました。
そこで郵政省は、「それまで各県毎の免許だった岡山局と高松局の相互乗り入れを認めるのと引き換えに、岡山側に本社を置く民放をもう一つ増やす」との交換条件を提示、両県が合意したことで、その年の４月１日付で前述４局の放送地域は名実共に両県を叉に掛ける事となりました。
これで後発２局も、対岸で観やすくするように送信所の出力を上げ、入り組んだネット関係もすっきりしました。
更に83年にはＲＮＣ・ＫＳＢが岡山に、ＲＳＫ・ＯＨＫが香川に中継局を建設、続いてＲＮＣ・ＫＳＢは84〜86年に本局を高松から岡山に移転、両県は完全に一つのサービスエリアにまとまりました。
この間、1985（Ｓ60）年10月には、前述の交換条件によってテレビせとうち（ＴＳＣ・テレビ東京系）が開局、同局はこのエリアの民放としては初めて岡山・香川同時開局となりました。
所謂大都市圏以外では唯一のテレ東系列局となります。
ただ、高松本社の局は岡山でも鳥取との県境に近い蒜山（ひるぜん）高原には中継局がまだなく、デジタル全面移行に際しての課題となっています。
コメント欄から
○私は 1966-70 年ごろ高松にいました。
そうか、民放は２つしかなかったんですね。
それがちょうど増えた時期でしたか。
とてもためになります。有り難うございました。（ぷんたろう）
●仰る通り、丁度1968〜70年にテレビ局の第二次開局ラッシュがあり、各地に最低でも２局は民放がそろうようになりました。
岡山・香川では当時実質３局が観られたことになります。 （うみがめ）
○他県のTV局の電波が入り乱れるのもヤヤコしいもんですね(汗)
>デジタル全面移行に際しての課題
ウチは広島市内をカバーする地上波デジタルの送信塔が肉眼で見える位置(笑)なので普通に地上波デジタルが見られる環境ですが、皮肉にも私はほとんどTVを見ない人なので、せっかくの地上波デジタルTVも宝の持ち腐れです（黄色いタカ）
●私は今のところ、地上デジタル購入待ちの状態です。
完全移行する2011年までには、と思っているのですが…（うみがめ）