うみがめクリニック��


病院当直の実態(2007.01.23)

病院に入院患者がいる以上、彼等が何時急変するかわかりません。その為に、本来の診療時間でない休日や夜間でも、何時患者が急変してもいいように、常に医師が待機しています。これが病院当直の本来です。

患者の急変さえなければ、言葉本来の意味としての当直(勤務実態を殆んど伴わない休日・夜間の職場待機)で済む訳です。当直室で十分な睡眠をとることもできます。

事実、私が今勤める病院ではそうなってます。それどころか、医師は全くの自宅待機となっている病院もあるくらいです。

しかし、そうはいかない現場があるのも事実です。

私が今勤めているのは入院患者の殆んどが高齢者で、患者が急変するのは月に1回あるかないかという病院だからこれで済むのですが、急性期の患者を多く抱える病院ではそうはいきません。

不眠や不安を訴える患者への対応、急変から死に至る患者への対応、あるいは徘徊がもとで転倒する患者への対応などに追われ、休まる暇がない病院はざらにあります。

まして救急指定病院ともなると、何時急患が運ばれるかわかりません。

それらを全て一人の医師が対応しているとしたら、いかに大変かがわかります。

下手をすれば正規の勤務時間以上に忙しいかもしれません。

しかも、そんな深夜の激務をこなした後でも、夜勤看護師なら夜勤が明ければ解放されますが、医師の場合はそのまま日常診療を続ける場合が多いのです。

人手が限られており、夜勤明け即退勤にはできないのです。

そのくせ、当直の報酬は思いのほか少ない。所謂時間外労働には当たらないからです。

そういえば今の病院でも、外部からの当直医が来るまで〈通常当直勤務は午後5時半からだがその時間通りに来る医師は稀)常勤医が待機することになっているのですが、これもサービス残業と見なされ報酬はつきません。

こうした勤務実態の割に少ない報酬について、明確に異議を申し立てる医師もいますが、それはどうしてもスタンドプレーに終わりがちです。

というのも、医師の多くは一つの職場に定着しない傾向にあり、「今の職場が気に入らなくても、より良い条件の職場を見つけりゃいいさ」で片付けてしまうところがあるのです。

あるいは普通看護職や事務職が加入している病院労組にも医師は加入してない場合が多いのです。多くの病院では医師は管理職と同列に見なされ、その為に加入できないのです。

お役所は、医療費削減にばかり血眼にならず、医師の待遇改善にも本腰を入れて頂きたい。


アルバイト・ドクター(2007.02.02)

世間ではよく、「医者は高給取り」などと言われます。

確かに、ある程度キャリアを積んだ勤務医なら、同じ勤続年数の平均的な会社員と比べれば多いほうかもしれません。

でも、その専門性や仕事内容を考えれば、まあこんなものか、という程度の報酬だと思います。

「セレブ・ドクター」としてメディアに紹介されているのは大概開業医、しかもそこまでになる過程での努力は並大抵ではないはずです。それに彼等は収入も多いが、それだけ納める税金も多いはず、私自身は無理してそこまでになろうとは思いません。

一方、大学病院に勤める医師の報酬も、公務員の一般職に比べ多い程度です。そのためでしょうか、教授と言えどもアルバイトとして週1回、関連病院に出向するケースが多いのです。それが行き過ぎたのが「名義貸し」、つまり名前だけの出向です。さすがに、社会問題となったことで見直されてはいますが。

これが研修医ともなると、更に厳しいものがあります。

研修医の給料は日割り計算で算出され、月当たりの金額は同じ勤続年数の看護師よりも少ないかもしれません。

更に大学院生という身分の人もいます。彼等は学生であって職員ではないから、給料が出ないばかりか学費を納める必要があります。

だからでしょうか、とりわけ研修医や院生にとってはアルバイトによる副収入が有難いものになるようです。

私も、研修医時代には大学での仕事の傍ら外部の仕事を結構引き受けていました。

献血会場に行った事もあります。地域や職場の検診に出向いた事もあります。県庁の診療室に詰めていたこともあります。

そして前にもお話した通り、休日夜間の病院当直を引き受けた事もあります。

地域検診で時に山間部に出向いたり、当直で県西部(土佐中村)の病院に出向いたりするときには、ちょっとした旅気分でした。それが大学での仕事のストレスを一時忘れさせてもくれました。勿論これも仕事ですから、患者(受診者)に対してはちゃんと向き合っていましたよ。

民間病院の常勤医となってからは、基本的にその病院からの給料だけで生活できるレベルとなりました。とはいえ、今の病院に行き出した頃に一度、小遣い稼ぎに当直を引き受けてくれないかという話が来ました。

それは、その病院に当直医を派遣していた大学のある医局から持ち込まれました。

その医局の人事担当者が私とは大学入学同期で(卒業は向こうが先)、「複数の病院に当直医を回すのに人手が足りない。ここはひとつ、うみがめ先生にお願いできないか」と言うのです。初期研修の義務化によって研修医のアルバイトが原則禁止となった影響でした。

本来の勤務に支障の無い程度なら問題なかろうと考え、原則として毎月第一土曜日の昼から翌朝までの当直を引き受ける事にしました。

同僚医師の中には、平日の1日を休んで別な病院での仕事(勿論日勤)に当てている人もいますが、私はそこまで器用ではありません。当分は今の勤務体系でいくつもりです。


ゾロと呼ばないで (2007.02.16)

医薬品を選ぶ際、同じ成分で同じ効果なら、出来るだけ安上がりに済ませたい、そう考える人は多いのではないでしょうか。

正露丸の場合も、本家本元の「ラッパのマーク」は大概定価販売、一方同業他社から出ているものは特価品として売られている場合が多いように思います。

このような違いは、実は病院で処方される薬にもあることをご存知ですか?

かつて医療現場では、成分や効果が同じ医薬品の中で、先発品を「ピカ」後発品を「ゾロ」と呼んで区別していました。

ピカ品は、大手製薬会社が自ら研究開発したもので、多くの場合その研究開発費が価格に上乗せされています。

これに対しゾロ品は、先発品と成分はほぼ同じですが、研究開発費がかからない為その分安上がりな薬です。多くの場合中小企業が手掛けています。

ただ、かつては「安かろう悪かろう」の言葉通り、効果まで先発品と同じという訳ではなく、ゾロ品が粗悪品の代名詞のように言われていました。

しかし、このところの医療費削減の動きの中で、価格の安い後発品が見直されて来ています。同じ成分同じ効果なら、価格の安いほうが患者にとっても医療機関にとっても経済的負担が軽くなるからです。後発品専門メーカーもそれを意識してか、ゾロというマイナスイメージの強い名称から「ジェネリック」と言い換えるように働きかけています。

実際、私が勤める病院でも、置き換えがきくものはジェネリックに置き換わってきています。さすがに患者側が「ジェネリックにしてくれ」と頼むことは、それが置かれているという保証がないからか稀なようです。

その昔、病院に出入りする製薬会社の社員は、少しでも自社製品を多く採用してもらおうと医師や薬剤師に巧みに近づき、院内ではせっせと彼等の機嫌を取り、アフター5には製品説明会と称して、時に料亭で接待することも普通だったといいます。

私も、研修医の頃そうした接待を何度か受けたことがありますが、彼等はそんなにまでして医者に媚びたいのか、という感想しか持てませんでした。反面、自分からは絶対行く機会がないであろう料亭で食事が出来たことで、少し得した気分にもなりましたが。

丁度この頃、こうした見返りを期待しての接待が社会的な批判を集めたせいで、各社とも接待漬けの姿勢を改めました。

今では、弁当付きとは言え、言葉本来の意味での製品説明会を病院内で行うのがせいぜいです。

かつて病院出入りの製薬社員はプロパー(ガンディスト)と呼ばれていましたが、最近では世界共通語のMR(製品情報係を意味する英語の頭文字)と呼ばれるようになり、その待遇もかなり改善されました。 それこそ、不本意な接待に振り回される事なく製品紹介という本来業務に専念している人が多くなったように思います。

本来どの薬を採用するかは、その病院の医師・薬剤師などが合議の上で、各社公平な立場で決めるものです。特定の会社が接待攻勢を掛ければ、どうしてもその会社になびくのが人情というもので、それでは不公平となってしまいます。

先発品対ジェネリックということで言えば、どうしても先発メーカーのほうが卸問屋とのつながりも深く有利になっている現状があります。医療費節約の為本気でジェネリックを普及させたいと思うのなら、その古い商慣行をも見直すべきではないでしょうか。


これでジェネリックが普及する?(2008.04.01)

(上記記事に関連して)

ジェネリック品が今後爆発的に普及するかもしれません。

2008年4月1日から診療報酬の改定が行われましたが、その中で処方箋の様式も一部変わりました。

備考欄に処方医の署名がない場合には、薬局が先発品に代えて後発品を処方できるのです。

診療報酬改定については、後期高齢者への医療費負担増という余り有難くない改定もありますが、安い後発品がより多く処方されることで患者負担が軽減されれば、それはそれで有難いのではないでしょうか。

ただ、現場の医師は戸惑いを隠せないようです。

日経メディカル・オンラインが実施した緊急Web調査の結果によりますと、「原則として署名しない」30.5%に対し、「原則として署名する」は35.5%とほぼ拮抗、「まだ決めていない」も24.9%います。

実は2006年頃にも、後発(ジェネリック)医薬品の使用を促進するため、処方箋の備考欄に「後発医薬品への変更可」という記述と処方医の署名欄を設ける改定がなされたのですが、署名があった処方箋は全体の約17%、実際に後発品への変更が行われた処方箋は1%前後に留まったとのことです。医師が署名する時間や手間を惜しんでいたからではないかと思われます。

とはいえ今回のアンケート結果からは、「まだ決めていない」と答えた医師の幾ばくかも署名しないであろうことを加味すれば、薬局が後発品を調剤できる処方箋の割合は、これまでよりかなり増えることが予想されます。

反面、現場の医師にはこの改定に不安や不満を訴える声も挙がっています。

曰く、

「薬局で後発品にされて副作用が出た場合、署名してなかったからといって医者のせいにされたのでは、やってられない」

「本来処方箋は公的文書であり、訂正にも印鑑を要する。これを勝手に変更できるとするのは憲法違反ともいえる」

「ジェネリック医薬品については、諸外国の導入過程と比較するとあまりに短絡的な導入方法と言わざるを得ない」

「後発品にしたくない場合に署名することは、忙しい診察時に大きな負担になる」

確かに、いくら先発品と同等と言っても、全く同じものではないのですから、先発品では起こりえなかった副作用が出てくるリスクもあるでしょう。常に最悪の場合を想定するのが医師という人種です。

でも薬を直接出すのは薬局であることを考えれば、後発品による副作用は医師の責任とは言い切れません。

何より、クスリにリスクは付きものです。

リスクを恐れる余り署名する医師が多いようでは、余り効果は期待できません。

 
私が勤める病院の近くでも、6月頃に所謂門前薬局がオープンしましたが、そうなるとこの私も上記の判断を迫られることになります。

患者負担を考えれば後発品を出してあげたいとは思いますが…


病院広告(2007.04.09)

皆さんは、病院の広告と言えばまず何を思い出しますか?

多くの方は、街頭の立て看板、電柱広告、駅構内や電車・バスの車内広告、あるいは電話帳広告を思い出すでしょう。

あまりテレビやラジオのCMという形ではお目にかかることはないと思います。あったとしてもせいぜい美容外科くらいでしょう。

ところが、地域によっては一般の病院も普通にCMを流しています。

そのいい例が高知です。

単位人口当たりの医師数が最高レベルの県は、意外なことに高知や徳島などとなっているのですが、その為にこういった地域では、病院同士の患者獲得競争も盛んで、広告費に多少お金がかかってもテレビやラジオに広告を出したほうが効果的、と考える経営者が多いのです。

現に、私の今勤める病院も一度テレビCMを出した事があります。

ところで、病院広告ってあまり味気ないものが多いと思いませんか?

それは医療法によって、広告できる項目が厳しく制限されているからです。

そこで問題です。

次に揚げる病院広告の中に、本来広告してはいけない項目が3つあります。どれでしょう?

医療法人やふじお会

海亀山病院

診療科目

内科・外科・整形外科・リハビリテーション科・麻酔科(担当医・鶴川秀夫)

診療時間

9:00〜12:00、14:00〜18:00(月〜金)

日曜・祝日休診

高知市龍馬町1−2−3

TEL(088)123−4567

入院施設完備(差額ベッドあり)

老人保健施設併設(全室南向き)

院長 医学博士・海亀山直樹

(勿論これは架空の病院です)

答えはのちほど…  


白衣は○○の象徴(2007.05.02)

貴方なら、この○○のところに何と言う言葉を入れますか?

「清潔」と入れた方、その認識は改められたほうがいいですよ。

医療従事者が着る白衣、あれほど不潔なものはありません。

薬品が飛び散るは、返り血や排泄物を浴びるは、おまけに病原菌が付着するは、却っておろし立てのような白衣を来ている医療従事者ほどまともに仕事をしていない、と言えるかもしれません。

いや、不潔なのは白衣だけじゃありません。

ロイター電が伝えた所に依りますと、「マレーシア医師会は、ネクタイが健康上有害であると主張し、医師にネクタイ着用を強要しないよう保健省に訴えた。1日付のスター紙が報じた。  

それによると、同医師会はネクタイが非衛生的であり、感染症などを広める危険性があると指摘。ネクタイは頻繁に洗われるものではないため、肺炎や血液の感染症を引き起こす病原菌を運ぶことがあると主張している。  

一方、同省関係者は同紙に対し、病院内医師の服装規定を緩和するためには、ネクタイが健康上危険という証拠がさらに必要だとの見解を示した」とのことです。

私自身、臨床実習の頃や研修医1年目の頃は、一応の礼儀としてネクタイを締めていましたが、2年目からは、周囲にネクタイを締めている医師が殆んどいなかったせいもありましょうが、仕事の時もネクタイはしないようになりました。夏場は動きやすいケーシースタイル(かつての医療ドラマ「ベン・ケーシー」で主人公が着用していた事からそう呼ばれる)にすることも多いです。

まして、上記のように世間的には紳士の嗜みであるネクタイが、医師にとってはむしろ無意味、それどころか危険だったと聞き、ああ、あの時ネクタイ着用を止めて正解だったな、と思えてきました。

そう言えば、最近ナースキャップもあまり見かけなくなったと思いませんか?

あれも、昔は看護婦の象徴と言われてきました。

しかし最近、看護婦が看護師と言い換えられたのと歩調を合わせるかのように、ナースキャップの着用を止める病院が増えています。これも主な理由は、機能的でない、病原菌が付着してむしろ不潔、というものです。

現に私が勤めている病院でも、既にナースキャップは廃止されました。

院内感染症は、勿論あってはならないことですが、案外医療従事者が最大の媒介経路かもしれません。


癌治療の全て (2007.05.12)

大学の講義では、国公立と言えども、時に型にはまらない個性的なスタッフにお目にかかることがあります。

私の通っていた大学にも、そんな人は何人もいました。その中の一人、胸部外科が御専門の助教授(当時)のある日の講義をここに再現してみましょう。

演題は「癌治療総論」です。

一口に癌治療と言っても、出来る部位や組織型、進行度によって様々ですが、ここでは総論的な知識を、社会の癌「暴力団」への対策に例えてお話します。

�ヽ芦弊攴�(一斉検挙)

最も確実な方法ですが、あまりに深く入り込んだ場合は取りきれません。

��化学療法(毒を盛る)

時に副作用を起こす危険があります。分量と効果を十分見極めましょう。

�F位�塞栓術(資金源を絶つ)

癌組織を栄養する血管を固めてしまう治療法です。それによって、自然消滅するのを待ちます。一種の兵糧攻めです。

�な�射線療法(ミサイル攻撃)

癌組織(組事務所)を直接攻撃する方法です。 ただ、周辺細胞(一般人)に流れ弾が当たる危険性があり、より慎重さが求められます。

�ヌ髪嵶屠 塀嗣臼親亜�

周辺細胞に抵抗力をつけさせ、結果的に癌細胞を縮小させる治療法です。 例えて言うなら、周辺住民が「暴力団を許さない」という毅然とした態度をとることによって、彼等が立ち退いたり、改心したりする結果になることを期待する訳です。

 


病院広告・解答編(2007.04.10)

医療法第69条に、病院の広告に関する条文があります。内容は以下の通りです。

医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関しては、文書その他いかなる方法によるを問わず、何人も次に掲げる事項を除くほか、これを広告してはならない。

1.医師又は歯科医師である旨

2.次条第1項の規定による(=医業及び歯科医業につき政令で定める)診療科名

3.次条第2項の規定による(=前項の規定による以外の当該診療に従事する医師又は歯科医師が厚生労働大臣の許可を受けた)診療科名

4.病院又は診療所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項

5.常時診療に従事する医師又は歯科医師の氏名

6.診療日又は診療時間

7.入院設備の有無

8.紹介をすることができる他の病院又は診療所の名称

9.診療録その他の診療に関する諸記録に係る情報を提供することができる旨

10.前各号に掲げる事項のほか、第14条の2第1項第4号に掲げる(=厚生労働省令で定める)事項

11.その他厚生労働大臣の定める事項

それに照らし合わせると、前回の出題の答えは、赤字で示した部分になります。

医療法人やふじお会

海亀山病院

診療科目

内科・外科・整形外科・リハビリテーション科・麻酔科(担当医・鶴川秀夫)

診療時間

9:00〜12:00、14:00〜18:00(月〜金)

日曜・祝日休診

高知市龍馬町1−2−3

TEL(088)123−4567

入院施設完備(差額ベッドあり)

老人保健施設併設(全室南向き)

院長 医学博士・海亀山直樹

麻酔科の担当医については、むしろ記載が義務付けられています。

一方「医学博士」あるいは「○○学会認定医」の肩書きは、確かにあれば箔が付きそうですが、あまり広告すべき事柄とも言えません。

あと、「差額ベッド」や「全室南向き」も、医療や看護には直接関係ない項目ですので、広告できない事となっています。

他にも「抜群の治療成績」とか「親切なケア」といった項目も(あってもいいとは思いますが)広告できません。  


医療格差是正への動き(2007.10.12)

昨今は格差社会と言われます。

医療現場にあっては、貧富の格差によって受けられる医療の質にも格差が生じるのでは、という懸念が広がっていますが、世の中にはそうした状況を少しでも改善しようと努力している人もいます。

以下は、「現場からの医療改革推進協議会」で事務総長を務める、中央大学公共政策研究科客員教授にして参議院議員の「すずかん」こと鈴木寛氏がMRICに投稿した「『ともどく』に注目しています。」という記事からの引用です。

保険料を払えずに国民健康保険証を取り上げられ、病院に行くのを我慢した末に手遅れになって亡くなる方が増えているようです。  

保険証を取り上げる側の言い分としては、保険料を払えないくらいなら生活保護を受けなさいということになります。しかし、実際には生活保護が認められるハードルは意外と高いので、挟間で苦しんでいる人は大勢いると思います。また、自立して生きていこうと生活保護を避ける方々の意思を尊重することも大切です。  

この問題は、医療とは何か、福祉とは何か、政治に対して重大な問いを突き付けていると思います。政治家として重く受け止め、改善の道を探りたいと考えています。  

ただし、国や公共団体の制度として新しく何かしようとすると、予算や手続きの制約から、どうしてもある程度の時間がかかります。現在困っている方々に対しての手立ても別に考える必要があると思います。  

そんな中、友人で『いのち輝かそう大賞』の主催者でもある亀井眞樹医師が、緊急避難的に、無料で受診できる医療機関を作ったらどうかと提案されました。  

役所のお金をあてにしない民間のしなやかなスピード感に期待すると同時に、道のりの困難さを思いました。一銭の得にもならないうえに、法令上の様々な障害が立ちはだかると予測されます。誰が火中のクリを拾うのだろうと思ったのです。  

しかし心配には及びませんでした。東大医学部の須田万勢氏をはじめとする医学生、看護学生が趣旨に賛同して「ともどく」という団体を作り、動き始めてくれたそうです。  

考えてみれば、私のゼミの学生たちが中心になって新宿に診療所(コラボクリニック新宿)を開いてから、もう10カ月になります。彼らも、しがらみのない身であっても「やればできる」ことを示してくれました。  

「ともどく」メンバーのエネルギーや善意を信頼し、「できる」と信じて支援していきたいと考えています。皆様も、どうかご自分のできる範囲でご協力していただけないでしょうか。

「格差社会の拡大は政治が悪いからだ」とは良く言われますが、その政治家の中にもこうした取り組みに協力している人がいることを知って頂きたく、ご紹介した次第です。


生まれ変わったコンビニ診療所(2009.01.07)

上記記事で紹介した「コラボクリニック新宿」について、実は2007年12月28日で閉院していたことが分かりました。

病院の公式ホームページにも閉院に至った事情について何も説明がありません。

しかし、こうしたコンビニ感覚の診療所は、実は形を変えて今も存在しています。

立川駅構内で「ナビタスクリニック立川」を開業している久住英二医師の「『医の中の蛙』 コンビニ診療所」という記事がMRICを通じて配信されたのですが、それにはこう書いてありました。

 皆さんにとって医療は使いやすいものでしょうか。仕事が終わるころにはどの医者も閉まっている、病院に行くと通勤には遠回り、待ち時間が長いなどで、医療機関から足が遠ざかっている人も多いでしょう。私たち東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム部門では、医療者だけでなく患者さん、家族、社会のすべてにとって利便性の高い医療体制を構築しようと研究や活動を行っています。あえて「医学」ではく、「医療」というのは、医学は学問で、医療はその実践だからです。今回は、医療をもっと便利にするための活動を紹介いたします。  

私たちも、医療機関は不便だと感じていました。なぜなら、一日は二十四時間あり、急性疾患では夜に具合が悪くなることが多いのに、ほとんどの医療機関は昼間の八時間しか診療していません。病院の夜間救急はありますが、不便です。慢性疾患はさらに問題です。生活習慣病にかかるのは、ちょうど職場で責任の重い年代でもあり、定期通院はなかなかできません。放置すれば、心筋梗塞(こうそく)などの、より深刻な疾病を発病するリスクが高まります。  

コンビニエンスストアが便利なように、夜も普通に診療する病院があったら、きっと便利だろうと考えていました。コンビニエンスストアの特徴は、便利な時間帯の営業、生活動線立地、幅広く一定レベルの品ぞろえです。そこで二〇〇六年に、西新宿のサラリーマンの通勤経路にあたるJR新宿駅西口徒歩三分のビルで、平日十八時から二十一時まで診療する内科診療所をつくり、調査研究しました。  

診療所には、多い時で二十人ほどが受診しました。二十代と三十代がほとんどで、女性の比率が高く、風邪やうつ病、適応障害の人が多かったです。受診した方のほとんどが西新宿で働いており、同じ新宿でも東口方面から来た人はごく少数でした。このことは、立地がいかに受診動態に大きく影響するか示唆しています。また、受診者を対象に行ったアンケートから、いままでは忙しくて病院に行けなかったという人が多いことが分かりました。若い人や女性が多いのは、仕事で持ち場を離れにくく、日中受診しにくいためと推測しました。  

この結果から、満たされていない医療ニーズは大きく、それを解決するためのキーワードとして、「夜間診療」、「生活動線」が重要であることがわかりました。この結果をふまえ、さらなる医療ニーズの調査研究を目的として、JR東日本の立川駅に直結した診療所「ナビタスクリニック立川」を今年(2008年)六月に開設しました。平日は朝十時から夜九時まで診療しています。机上の空論でなく、実践を通じて、患者さんが望む医療のあり方を追求していきたいと思っています。

何のことはない、新宿での開業は将来に備えての実験に過ぎなかったのですね。

今回の立川での試みが、末永く続くことを私も期待しています。  


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